カタログ製作
はじめに
新商品・新規事業を顧客候補の方にご理解をいただくために、1枚の紙にまとめた販促物をつくってみましょう。つまりカタログです。
もしカタログを作らない場合であっても、新商品・新規事業の価値を顧客に最大限の効果で伝えていくために顧客へのアピールポイントを1枚にまとめた資料を作る価値はあります。これがあれば、Webページを作る際の骨格となりますし、マスコミ向けに新商品を発表する際のプレスリリース原稿の下敷きになります。イベントに出展する際にはステージに掲げるタイトルや、展示コーナーに配置するパネルの原稿にもなります。
スケジュール
ただし、必ずしも、写真撮影、カタログ作成、Webページ作成の順番に工程を進める必要はありません。
写真撮影、カタログ作成、Webページ作成が一塊となって同時進行で制作が進められることもありますし、実は、Webページ製作で重要となるSEO対策で説明する、キーワードを考察した上で、タイトルや文章を考察するという作業は、写真撮影、カタログ作成、Webページ作成は一塊となって製作を進めていく中で行われることが望ましいぐらいなのです。(そうしないと、カタログとWebページでタイトルが異なってしまうようなことにもなりかねませんし、タイトルにぴったりの写真が用意できないかもしれません。
カタログ原稿で産み出されたコンテンツは、ポスター、展示パネル、宣伝原稿・・・・を作るためにも有効なってきます。これらの製作作業が本格化する前にカタログ制作のメドがついていると望ましいのです。
カタログ製作は、新商品を発表する3ヶ月前には着手しましょう。
カタログ製作の流れ
カタログの製作は、「原稿を作る」工程と「印刷、発送する」工程の2つに大別できます。「原稿を作る」行程のほうが「印刷、発送する」工程よりも労力が必要です。定量的なデータはありませんが、感覚的には4対1ぐらいの比率と考えておいてください。
「原稿を作る」工程では、「Webページ」や「お披露目セット」に使う「展示パネル」や「ポスター」にカタログ原稿を展開していくことも考慮しておく必要があります。
カタログ、Web、展示パネル・・・が、同じようなテイスト(風合い)で、同じ決め台詞(セリフ)で、同じようなグラフィック(写真やイラストや文字デザイン)として一貫させていくことが望ましいことについての説明は不要でしょう。
これらへの展開は、カタログを作った後で転用を考えるのではなく、最初からマルチな展開を想定して考えておくことが、マーケティングの効果も高まりますし、コストメリットにも効果があります。
- カタログの原稿案を考える
準備
[戦略策定]で考察した内容を再確認
[訴求点明確化]の資料作成で考察した内容を再確認
カタログ表面案を考察する
カタログ裏面案の考察する
法令遵守の確認
- カタログの製作(原稿、印刷)
準備
業者の選定
カタログ原稿制作の発注・納品
カタログ印刷の発注・納品
配布
準備(カタログ原稿案を作る前の再確認)
まず、[戦略策定]で考察した新商品・新規事業の戦略を確認しましょう。
カタログが顧客に伝える趣旨は検討した戦略に終始一貫して合致するようになっていなければなりません。
・敵を知る(顧客について考察します)
・敵を知る(競合や環境について考察します)
・己を知る
・顧客にどんな価値を提供できるのか?
つぎに、[訴求点明確化]の資料作成時に考察したアピールポイントの5つの要素を確認しましょう。
カタログに並ぶ言葉はこの中から抽出されます。
・エレベータトーク
・メインタイトル
・サブタイトル
・特長3つ
・利用シーン(複数可)
全く同じ商品であってもターゲットとする顧客が複数あれば、カタログも複数の用意をすることも考えられます。この場合、1本にまとめるか、複数のカタログを用意する方が良いのかをこの段階で考えておきましょう。(できれば一本にまとめることができれば効率が良いのですが)
例えば、ドラッグストアに並んでいる「ハイチオールC」という商品は、二日酔いの早期改善のサプリメントと、女性向けに美肌を育むサプリメントの2つの顧客層にアピールすることができます。このような場合、2種のターゲットのそれぞれに最適化した訴求内容、イラスト、グラフを容易して、2種のカタログを作るほうが顧客の心に届く販促物になるでしょう。
<<参考LINK>>
戦略策定のページ
訴求点明確化の資料作成のページ
カタログ表紙案の考察
では、これより、一番基本的な形と言える ”A4サイズの表裏を使ったカタログ” の製作を演習として考えていきます。俗に言う「ペラ一枚」の販促資料です。
まず、心構えとして、あくまでカタログを手に取る立場の人の身になって考えることを常に行いましょう。例えるならば、「オレって凄いだろう。かっこいいだろ。」と迫ってくる男性を好きになる女性は一部の例外を除き多くはありません。同じように、カタログは「自分の魅力の押し出し、押しつけ」では魅力的になりません。カタログを読む相手の心情に立って考えましょう。
相手の立場になって考える方法の一つとして、イノベーター理論に従って新商品・新サービスの普及率から、狙うべき主要な顧客層の特性を想定し、そうした特性を持つ人の琴線に響くような訴求内容に仕上げることも考えましょう。
同じように競争戦略論でどの戦略を選択したかにより、アピールすべきポイントも変ってきます。戦略を無視してカタログを作ることはできません。基本的な経営学のフレームワークの活用をしながら進めていきましょう。
- 枠組み
[訴求点明確化]資料が仕上がっていれば、大体の内容は網羅されているハズです。
業者にはこの状態まで情報を揃えてから説明をすることで、円滑に製作が進み出します。手戻りも少なくなることで費用も節約できます。 逆に言えば、この内容が決まっている前に製作作業を開始することはやめましょう。必要な材料が揃っていないのに料理を始めるようなものです。あるいは必要な荷物が揃っていることを確認できていないのに登山に出発するようなものです。冬山登山であれば場合によっては死にます。
また、業者への説明の前に、新商品のコアメンバーの中で軽く内容の合意を取っておくことで、カタログ製作は円滑に進みます。
なお、レイアウトは図4-2よりも自由に作っても構いません。もし、お好みのレイアウトとなっている既存のカタログを見せながら業者に要望を説明してください。
- タイトル
10~20文字にまとめます。顧客価値か競争優位が語られているものでなければなりません。[訴求点明確化]の資料で「メインタイトル」としてまとめた文章をカタログの表紙に置きます。 検討した文言をそのまま置いてもOKの場合もありますが、カタログ用に言い直しを行う必要があるケースもあります。 [戦略策定]の段階で、誰をターゲットとしているのかを明確にしていますが、ここでもターゲットの琴線に響く内容となっているかを再確認します。 新規性のアピールが大事なのか、商品の便益(お役立ち)を訴求することが良いのか、実績を訴え安心感を持たせるほうが良いのか・・・とターゲットによって、全く同じ仕様・性能の商品であっても訴求タイトルは異なってきます。 ここではプロダクトアウトに陥らないように注意しましょう。
ここに専門用語を敢えて取り入れることで、その商品を必要とする人たちに強くアピールすることも方法です。
競合品のカタログのタイトルも考慮します。競合品よりも上回っていることが伝わるように。また競合品よりも魅力的であると受け止められるようにします。 自社商品の前モデルのカタログがある場合、ここで訴求していた内容とうっかり矛盾するような訴求とならないよう考慮します。 パートナーが存在する場合、パートナーにとって双方Win-Winを誘導するようになっているよう考慮します。
タイトル1本の文に訴求内容を集約できない場合は、サブタイトルを併記することも考えます。サブタイトルは、(メイン)タイトルよりも小文字で表記することになりますから文書量を少し多くできます。 だからといって、あまり書き込まないように絞り込む努力は欠かせません。例えば日本の伝統の俳句は17文字です。この文字数で世界観を表現できるのですから知恵を絞るとこころです。体言止めで終わらせるのが一般的です。 また、末尾に“!”は付けないほうが良いです。スーパーの安売りチラシみたいになってしまいます。
Webページにもカタログと同じタイトルを展開することになるでしょう。そうなると、Google検索で、良く打ち込まれるワードを入れておく(SEO対策を考慮しておく)ことも検討しましょう。 文字フォントについても少し考慮しましょう。商品の訴求と重なっているような文字の種類を選びます。太く堂々としたフォントが良いのか、繊細な感じのフォントが良いのか、色や濃さ はどの程度が適切かと
多数の関係者の意見を聞き、意見を取り入れると、多くの場合、突破力の弱いタイトルになってしまいます。キーマンの意見を聞かないと、今後の諸々の推進に支障を来すこともありますので彼らへの配慮は必要ですが、戦略段階から徹底して思考を重ね続けてきたあなたと数名しかその商品のタイトルを決める力はありません。
- 特長
[訴求点明確化]の資料で、競争戦略と顧客価値について既に決めている中から選びます。特長としてアピールする要素は、競争優位だけから選んでも良いですし、顧客価値からだけ選んでも良いです。混ぜても良いです。 まずは3つ程に絞り込むのが良いでしょう。2つであっても構いません。逆に5つでも不可ではありませんが、ちょっと多いです。言いたいことがいろいろあるかもしれませんが、できるだけ要点を絞ってみましょう。
例えば、「世界一の薄さ」は競争優位です。競合品と比べて勝っていることをアピールする競争優位を特長とすることは良くあることです。あるいは、「スーツの胸ポケットに入る薄さ」とすれば、顧客価値をアピールすることになります。つまり便利さをアピールすることです。両方を記載することも、どちらか一方をメインのアピールとして、他方を補足的に使うということも方法です。
どちらをメインにするか? これは、このカタログを見ていただくことを想定している人の属性によります。様々な視点から考えます。
競争戦略のどの戦略をチョイスしているかによってもアピールすべき特長の選択は異なります。例えば、コストリーダーシップ戦略を選択して、苛烈なシェア争いをしているのであれば上記に述べたようになりますが、差別化戦略を選択している場合は、競争優位とアピールして違いを印象付けることを徹底したほうが良いでしょう。 その際は差別化された分野の人達なら理解できる専門用語を使うことにより、専門性に拘った商品であることをアピールすることも方法です。 一方、集中戦略で顧客を囲い込んでいる場合は、顧客価値をアピールしていくほうが良いと考えられます。
これらは考え方を提示させていただいたものです。残念ながら、特長を選抜する方法はマーケティング戦略から一様には決めていくことができくいのです。 だから、「マーケティング戦略の●●●理論により、こうあるべし!」とあまり固定的に考えないようにしてください。あくまで、ターゲットを想定してペルソナマーケティングの手法で決めていくと言うことは欠かせません。戦略資料の中で、競争戦略と顧客価値、バランスを考えて選んでください。
もしターゲットが2種あり、アピールする特長を統一できないならば、どちらつかずの中途半端なアピールで、誰の琴線にも響かないようなカタログを作るよりは、全く同じ商品でもアピールする特長が異なる2種のカタログを作るほうが良いでしょう。 予算やターゲット別にうまく配布できる力(マーケティング4PのPlaceの能力)があれば一考に値します。
早い、軽い、美しい・・・の形容詞だけではなく、数値をアピールの中にいれることができると望ましいです。客観性が感じられるようになります。特長を3つ掲げるならば、1つぐらいは数値を入れたアピールができないか検討してみましょう。
ただし、数値を入れる場合は、公明正大に説明できる根拠を提示できることが不可欠です。そうしないと景表法に抵触してしまう恐れもあるので必ず確認が必要です。 タイトルの時と同様に、競合品のカタログ、自社商品の前モデルのカタログと並べてみながら考慮します。競合品よりも上回っていることが伝わるように。また競合品よりも魅力的であると受け止められるようにします。 Webページにもカタログと同じ特長を展開することになるでしょう。そうなると、Google検索で、良く打ち込まれるワードを入れておく(SEO対策を考慮しておく)ことも検討しましょう。
- 商品写真・利用イメージ
見た目がカッコいいグラフィックにするのも方法ですし、「そういうの、ある。ある。」と共感を呼ぶような内容にするという方法のいずれも考えられます。
写真は、商品の写真と背景の写真に分けて考えていきます。商品の写真は、撮影したものを使うことになります。商品単体を撮影した「商品写真」か、商品を使っているシーンを撮影した「シーン写真」のいずれかを選ぶことになります。 よって商品撮影の時には、カタログ表紙の仕上がりを想定して望むカット、望むシーンも撮影計画に組み入れておくことが望ましいです。
背景の写真(素材)は、撮影した写真からチョイスするという方法と、様々な写真を業者に調達してもらう方法の2種から選ぶことになります。調達する場合は、無償で素材を入手できる場合もありますが、有償であればより良い素材が入手できます。 例えば、空や海などの素材は無償で入手しやすいです。一方、店舗シーンとなると無償の素材もありますが、意図したシーンに合うような写真は有償素材しかないというケースも多くあります。このため、商品撮影の時には、カタログ表紙の仕上がりを想定して背景として使えるシーンの撮影計画も可能な範囲で組み入れておくことが望ましいです。
タイトルの考察時と同様に、競合品のカタログ、自社商品の前のモデルのカタログ、パートナーのカタログなどの資料を横に置いて商品写真・利用イメージの考察を行います。
なによりも、著作権に触れないよう留意を払う必要があります。関係者が作った資料に掲載してあった写真やイラストをカタログに利用する際には、誰かがWebページなどから入手した写真を資料に使ってしまっているケースも良くありますので、制作元が確認できていない資料を参考情報に使う場合は注意が必要です。
- 関係者へのヒアリング
例えば、カタログを配ってくれるのは、販売店の人達であるかもしれません。どんなシーンでカタログを使って説明するでしょうか。
パートナー方々の知識やマインドも想定して、カタログ内容がこれから乖離をしないようにしなければなりません。
例えば、カタログを使って顧客に説明するパートナーの方々にとって説明困難な専門用語が並んでいてはカタログの使用や配布が敬遠されてしまうかもしれません。 逆にパートナーの方々が専門知識を持っているのであれば業界用語が適切に使われているカタログに仕上がっていれば、より積極的に説明をしてくれることになるでしょう。
カタログ裏面案の考察
カタログを手に取っていただいた方の次ぎの行動を想定して考えましょう。狙うべき主要な顧客層の特性を想定し、そうした特性を持つ人の琴線に響くような訴求内容に仕上げることも考えましょう。
引き続き、一番基本的な形と言える ”A4サイズの表裏を使ったカタログ” の裏面の製作を演習として考えていきます。
- 枠組み
- 商品特長の詳細に説明
裏面では表紙に配置してアピールした商品の特長の内容をさらに掘り込んで顧客価値や競争優位を説明します。[訴求点明確化]資料が仕上がっていれば、大体の内容は網羅されているハズです。
できれば、従来の課題説明とこの新商品により解決できる価値を説明することができれば、これを説明をしたいものです。
良く言われる「ソリューション提案」ということになります。Before~After形式で説明すると理解してもらい易いでしょう。
- 商品の仕様・諸元
紙面の広さから、仕様の情報を全て記載できない場合は、顧客が購入時に重視する内容を重点的に記載して、仔細はWebページに記載することにしましょう。 商品の箱に同梱される取扱説明書などの他の印刷物の表記内容と相違が無いように注意しましょう。
- 商標権表記
さまざまなカタログを見ていると最終箇所に「●●は■■社の登録商標です。」という表記がされていることはお気づきでしょう。 我々のカタログでも、文中に使っている言葉で、怪しいと思われる名前はすべてGoogleで検索してみましょう。「●●」と「登録商標」の2ワードで検索すれば参考にできる事例を見つけることができる可能性が高いです。(絶対ではありませんが大いに参考になります)
正式には特許庁のデータベースにアクセスし商標登録の有無を確認する必要があります。また、その商標の権利を取得している企業のホームページに、商標権の表記についての説明が記載されていることもあります。 この場合は、その企業の指定する表記に従う文書をカタログに記載することになります。
極めつけは「記載されている会社名、製品名は各社の商標、または登録商標です。」と記載すれば、多少の確認漏れがあっても網羅されます。必ずカタログの文末にはこの文書を入れておきましょう。
- 各種注釈
例えば、 「商品は予告なく変更になります。」 「印刷物につき、実際の商品の色合いとは異なります。」 などです。
業界団体による注意喚起の記載を自主的に行うような場合もありますので、そうしたことが無いのか配慮しましょう。
法令遵守
商品企画の資料のような企業内の資料であれば、十分な根拠が確認できていなくても商品の特長を表現するために「従来の2倍」のような記載しているようなこともあるかもしれません。けれども、社外に公開していく資料は、適切な根拠を提示できないような訴求を行うことは許されません。
日本で配布するカタログには、景品表示法に違反しないような表現、表記にしなければなりません。例えば、「日本初の●●新登場」と表記するならば、根拠を示さなければなりません。
また、 「従来よりも●倍に強化」と表記するならば、比較した従来品が何であるかを示しておかねばなりません。比較が妥当と社会的に判断できる商品を選ばなければなりません。例えば、何世代か前のかなり古い過去の商品との比較であれば触法する恐れがあります。
他にも、医薬品の承認がとれていないのに、「便秘が治る」のような効能を暗示させるような表記も法令違反(薬機法違反)となります。
カタログ製作(原稿作成、印刷)の準備
カタログ製作は、「原稿の製作」工程と「印刷、発送する」工程の2つに大別できます。2つ行程を、それぞれ別の業者を選ぶこともできます。また、まとめてお願いすることもできる業者も少なくありません。
- 準備
△「原稿の製作」工程
見積依頼のため用意するもの
・訴求点明確化資料
・カタログ原稿案(表示、裏面)
・商品写真
・仕様表など(商品に同梱する取扱説明書の原稿案など)
△「印刷、発送」工程
見積依頼のため用意するもの
・印刷用紙の種類(サンプルとして類似品を入手しておけば良い)
・発行部数、送付先、納入日(EXCEL表にまとめておくと良い)
業者選定
Webページで「商品カタログ制作 印刷」と検索すれば多彩な業者が検索されます。費用もピンキリですし、金額が10倍も違うことも珍しくありません。もちろん高額なほうが”いい仕事”をしてくれます。
今回は、新商品・新規事業を紹介する基本的なカタログの制作を想定しています。また、あまり凝った制作は考えておりません。カタログ制作を掲げている業者であれば、難易度は高くない作業ですので比較的容易に希望を実現してくれる業者を見つけることができるでしょう。 まずは、候補となる5社ぐらい探してみてください。「カタログ制作 新宿」と地域名称の2ワード検索をして頻繁に打合せできる近所にある製作業者を探すことも方法です。
候補となりそうな制作業者には、今までに制作したカタログを教えてもらいましょう。自分たちの希望に近いコンテンツが作ってもらえそうであるか実績から確認しましょう。やはり業者それぞれに得意分野があります。新商品がターゲットとしている分野や業界についての経験がある業者ですと、製作過程での意思疎通も容易になり成果物もより優れたものになります。 また、競合商品のカタログ制作業者では無いことの確認もしておきましょう。意図しない情報流失のような懸念を避けたいからです。
業者の候補が決まったら、その業者の事務所に行って打合せをしましょう。現場に行くと気がつくこともあります。例えば、機密情報が漏れるような悪い意味でオープンな事務所であったら困りますよね。必ず一度は訪問しましょう。
そして、製作の責任者(ディレクター)に対して口頭で相談をしてみましょう。新商品・新サービスがどんな顧客にどんな価値を提供するものであるかを説明するのです。優秀なディレクターであれば、あなたの意図をくみ取って、その道のプロとして、あなたが思っている以上の内容の提案もしてくれるでしょう。 一方で、優秀ではないディレクターは、指示されたことの作業をするだけの作業しかできません。これらを口頭で相談をすれば、新商品のリーダーをしてきた方ならば感じ取ることができるでしょう。
複数の業者を回って納得できる方に会うことも大事です。ディレクターの能力は概して制作費に比例するものではありますが、同じ程度の金額でも成果物の内容に倍ほどの差があることも少なくありません。
まず、説明する前に機密保持契約書にサインをしてもらいましょう。(機密保持契約書をあらかじめ送っておきましょう)
前段階で検討したエレベータートーク、メインタイトル、サブタイトル、特長1、特長2、特長3、利用シーン案 の資料がこの説明時にはおおいに役立つでしょう。
また、試作品であっても、現物を持っていったほうが良いでしょう。
さらに、自社に類似商品があればそのカタログを準備したり、競合品のカタログがあれば、それを提示しながら説明することも効果的でしょう。これら既存のコンテンツを踏まえて、今回の制作ではどう違いを出したいのかを説明します。
逆に、業者からは過去の制作実績を提示・説明してもらいましょう。実際に商用利用された写真を見せてもらうことができれば、依頼する側としても安心感が増すでしょう。
「原稿の製作」工程は、不定形な作業となりますので、見積金額にはかなりの差がつくことがあります。3倍も5倍もつくこともあります。 暴利? コスト高の会社? と疑いたくなるかもしれませんが、質の高いカタログを作ろうとすると、費用もかかるものです。
ここでは費用をあまり掛けずに新商品を立ち上げることを想定しておりますので、準備段階の原稿案の完成度を高めることで、制作費を抑えることにします。 見積で示した原稿案の通りにタイトルや特長の文書、仕様表、写真を、印刷原稿に「流し込んで」もらうだけならば、業者の間の差で費用にそう大きな差は出ないハズです。
なお、アピールポイントのタイトルや特長の説明箇所を一緒に考えていただくことになると相応の費用もかかります。(キャッチコピーの作成費用) 内容が確定するまで何度か打合せをする必要があります。さらにコピーライターを起用してもらって提案をしてもらうとなると費用がさらにかかります。(著明なコピーライターですと車も買えるような金額になります)
同様に、カタログ表紙の商品写真の箇所の内容を高めようとすると費用はかかります。 より良い写真を選ぶ作業や有償写真の購入費用、商品を引き立たせるように素材を加工し表紙用のグラフィック製作する作業を納得するまで繰り返すことなると費用がかかります。 どの程度のクオリティで納得できるか(妥協するつもりであるのか)を業者に伝えていくことが肝心です。 グラフィックの製作は抽象的なのでなかなか伝達しにくいので、既存のカタログのサンプルを見せて「こんな感じにして欲しい」と具体的に伝えると良いでしょう。
「印刷、発送」工程は、だいたい確立された作業を流していくだけなので、業者間に大きな差は生じませんし品質のばらつきも大きくはありません。 (もちろん都内は高く、地方は安いという感じはあります) 候補となる業者から印刷サンプル例を見せてもらいつつ見積を依頼し、提示された概算価格と、お会いした際の信用度で判断しましょう。
以上の打合せや、条件提示の元で見積も出してもらいます。そして、撮影を依頼する業者を決定します。
なお、カタログ制作業者、印刷業者は下請法が適用される規模の企業であることも少なくありません。下請法に抵触しないように留意する必要があります。 ※原稿の制作(文章やデザイン作成のみ)を発注する場合は、自分の会社の資本金が 5,000 万円を超える場合は、5,000 万円以下の会社または個人事業者との取引に下請法が適用されます。次に、自分の会社の資本金が5,000万円以下で、かつ1,000万円を超える場合は、1,000万円以下の会社または個人事業者との取引に下請法が適用されます。
印刷物の制作を発注する場合は、自分の会社の資本金が3億円を超える場合は、3億円以下の会社または個人事業者との取引に下請法が適用されます。次に、自分の会社の資本金が3億円以下で、かつ 1,000 万円を超える場合は、1,000万円以下の会社または個人事業者との取引に下請法が適用されます。
カタログの原稿制作(発注)
原稿の製作業者を決めたら、機密保持契約や取引基本契約の書面を取り交しましょう。そして発注書を送ります。
- 製作開始
業者に原稿案、商品写真、ロゴの画像データ、仕様表、競合のカタログなどのデータを提示して印刷用の原稿の製作を開始してもらいます。
機密保持契約の締結た後であれば、より仔細な説明を行うことができるようになりますので、製作の責任者(ディレクター)に対して口頭で説明することを必ず行いましょう。 新商品・新サービスがどんな顧客にどんな価値を提供するものであるかを具体的に説明するのです。試作品があればこれをお見せすることも行いましょう。「百聞は一見にしかず」の通りです。 - 校正
初稿、二次稿、三次稿・・・・と業者から提示された原稿をチェックして修正指示をバックする作業を何回か行います。一般的に2~3週間の期間は必要です。
業者から提示されたカタログ原稿案にペンで書き込んで、複合機でスキャンしてpdfにして、メールで業者に送り返せば良いでしょう。 致命的な間違いは最初の段階からできるだけ無くすようにチェックしましょう。品名、品番、価格、性能、連絡先などの間違いを最後まで見逃して印刷してしまいますと大問題になってしまうからです。 また、レイアウトも後の段階で修正すると影響が多方面に及ぶので、初期~中期の段階で固めていきます。逆に言えば、”です。ます”の語尾の修正などは最後の段階でも難なくできるので、優先順位にメリハリをつけましょう。
関係者の複数の人々の目でチェックすることも欠かせません。
- 納品管理
完成した原稿を入手します。原稿は以下の4つを納品してもらうよう要請してください。
- ①本物の原稿
多くの印刷原稿は、DTP三大ソフトと呼ばれるInDesgin、Photoshop、Illustratorのアプリケーションで製作されます。入手する原稿データはこれらアプリケーションのファイル形式となります。 このため、普通のビジネスパーソンのPCにはこれらアプリケーションがインストールされてはいませんので、ファイルを開いて見ることもできません。 DVDに焼いて納品してもらいます。(次の改版のためにも原稿を入手しておく)
- ②pdf原稿(トンボあり)
高精度のpdf原稿を納品してもらいます。この原稿があれば、街角の印刷屋さん(キンコーズなど)で、すぐに、印刷できます。 (極端に言えば30分以内に数十枚ぐらいの印刷も可能です)いざと言う時にも安心です。
- ③pdf原稿(とんぼなし)
オフィスの複合機で印刷するための原稿です。社内のファイルサーバで共有することになるでしょう。
- ④pdf原稿(トンボなし フィルサイズを小さく)
ファイル容量を5M未満に圧縮したpdfファイルも上記と一緒に納品してもらいます。
カタログ原稿をメール添付で送ることもあるでしょう(お客様に、関係者に・・・)。そんな時は、メール添付できる程度のサイズ(最大で5MBのファイルサイズ程度)の原稿が必要です。 添付ファイルが大きすぎると、送れないこと、受け取ってもらえないこともあります。送る側、受け取る側のメールサーバが大きな添付ファイルがあると拒絶する上限を設定しているものです。
- ①本物の原稿
カタログの印刷(発注)
印刷の業者を決めたら、機密保持契約や取引基本契約の書面を取り交しましょう。そして発注書を送ります。なお、「原稿の製作」工程と「印刷、発送する」工程を同じ業者にまとめて発注できれば、業者間で原稿を引き継いだり、スケジュールを調整するような手間を省くことができます。
- 印刷方式の指示
オンデマンド印刷はオフィスのカラー複合機の上位版という感じの装置を使い印刷をします。よい簡易印刷機であれば素人目には仕上がりはオフセット印刷と区別がつきません。印刷物の仕上がりまで数時間で済むというメリットもあります。費用は印刷枚数に正比例します。カラー1枚20円ぐらいです。500枚裏表カラー印刷の場合で約2万円です。
オフセット印刷は、多くの出版物の印刷に使われている皆さんご存じの印刷機を回す方法です。原稿完成から印刷物の仕上がりまで1週間以上の時間が必要です。費用については、製版の工程にイニシャルコストを必要とします。あとは紙の部数に比例します。イニシャルコストが大きくなるため、あまり多くの部数を印刷しない場合であれば費用は印刷部数に比例しません。例えば1万部と2万部程度の差であれば費用はほとんど変りません。
- 印刷部数の指示
1000部までの印刷であれば、オンデマンド印刷のほうが安くすみます。1000部を超える場合はオフセット印刷のほうがコストが良くなります。
印刷する部数や、原稿完成から配布までの時間により、印刷方法を印刷業者と相談してください。
オンデマンド印刷とオフセット印刷を組み合わせて使う方法もあります。大量に印刷する前の試作として簡易印刷を使うのです。 最初はオンデマンド印刷で数百部の印刷を行って関係者に配ります。そして、関係者からの修正要請が指摘が無いことを確認してからオフセット印刷で大量に印刷を行うという運用です。
- 用紙の指示
紙の厚さや表面の光沢などで様々な種類の紙があります。印刷業者に指定をしなければなりません。
社内外にある既存の印刷物の中で一番自分のイメージに近い印刷物を入手しておき、「これと同じ紙で」と業者に見積をお願いすれば良いです。 よって、どんな紙はあるかの業界の専門用語を知らなくても大丈夫です。
私の場合、カタログラックに立て掛けて入れた状態も想定しているので、ある程度堅い(厚い)紙を指定しておりました。 柔らかい(薄い)紙の場合、折れて倒れたような情けない状態になってしまうからです。また、表面にツヤがある紙質を選びました。その方が安っぽく見えないからです。
- 1束にまとめる部数の指示
カタログは一定の部数で束ねて納品するように要請します。全国の支店、営業所、代理店、店舗・・・に配布する最小の枚数は何枚でしょうか? もし、最小でも各地に100部ずつ配るのでしたたらカタログを100部単位で束にするように指定します。地方の営業所には1束で、都市部の支店には3束を送るというように出来ます。
見積段階から束ねる部数を伝えておきます。
- 色校正
オフセット印刷を開始する前に、試し刷りした紙面で色合いをチェックすることです。色合いが購入意欲にも影響する商品のカタログの場合はチェックが欠かせません。食品、化粧品、高級品・・・ カタログにモデルや俳優などの芸能人を起用した場合も、肌の色合いなどで所属事務所のチェックが必要な場合もあります。
カタログの配布
カタログを印刷所からあなたのオフィスに納品してもらい、指定の日時に指定の各所に送り届ける作業を行います。
ただし、できればこの作業は印刷を発注した業者に委託して、あなたやあなたのチームが行わないように段取りすることをお勧めします。
こうした工数を外注して、新商品を売るためにあなた達にしか出来ない他の作業に振り向けるべきと考えるからです。よって、印刷物の発送は印刷に引き続き業者に依頼することを想定し予算に組み込んでおきましょう。(宅配便の金額程度ですから、それほど多額ではありません。)
- 発送先をリスト化して渡す
自社の支店、営業所、店舗、パートナーや、代理店、店舗、イベント会場・・・のリスト(EXCEL)を作り、発送数、到着日を記載して、印刷業者に依頼しましょう。
- 到着時期の指定
新商品の発表会やプレスリリースを行うならば、この予定日よりも前に到着しないように業者に強く徹底して指示をしておく必要があります。