内部資料製作
はじめに
新商品・新規事業を顧客候補の方にご理解をいただくために、写真撮影、カタログ、Webページ、広告原稿をここまで準備する説明をしてきましたが、これらの作成に加えて関係者だけで共有する情報をまとめた「内部資料」も作りましょう。
どんなに優れた新商品を作り出し、素晴らしい戦略を立案できても、その新商品の販売活動に人が介在するのであれば、関わる人の意識次第で結果に影響が及びます。
ですから新商品に関わる身内の方々に「やる気」になってもらうためにも有効な「内部情報」資料作りは、情緒的な取り組みではなく論理的にも必要なことです。
スケジュール
例えば、イチオシのネタだが一般公開するには客観性が足りない・調査量が足りない。競合に見られるとすぐにマネされキャッチアップされる恐れがある。公開情報として許諾を取るのに時間がかかる・お金がかかる。情報量が多くて紙面やWebには書き切れない。(開発秘話みたいな)面白い話だがカタログなどの公式資料に書くような内容ではない。
そこで、一般公開を前提としたカタログ、Webページを作り終わりましたら、ここには記載しなかった情報をまとめた「内部情報」としての資料を作成しましょう。
そして、新商品を発表する前までににこの資料を仕上げて、関係者への事前お披露目の際の資料として使いましょう。
必須項目
まず訴求点明確化資料で検討した以下の5つの項目を記載し、これを補足する説明や、補完する情報を記載しましょう。
・エレベータトーク
・メインタイトル
・サブタイトル
・特長3つ
・利用シーン(複数可)
訴求点明確化資料の解説は、 こちら です。
ポイント
上記の記載必須の5つの項目を補足説明するために、用意すると良いと思われるポイントを以下に列挙します。
たとえ訴求点明確化資料の補足として使わなくても、新商品・新規事業の販売活動に有効と思える情報であればこの内部資料に記載しておきましょう。
- カタログやWebページで開示した情報を補足
表や図にすることで情報の価値を高めることも考えましょう。
同様に、『従来よりも性能が1.5倍に向上』という競合に対する優位性の訴求をしているのであれば、1.5倍となる試験データを資料としてまとめておくほうが良いでしょう。営業は自信を持って新商品を提案することができますし、顧客も納得できる説明を聞くことで満足して商品を買うことができるようになります。
- 実績データ
また、前モデルをご利用いただいている有力・有名なお客様のお名前を開示することができれば、次の顧客を獲得する有力な後押し材料になるでしょう。
ただし、お客様の「お名前」や、「使われ方」を公開できないケースも多々あります(お客様に公開する旨の許諾がとれない)そのような場合でも、関係者内の内部資料として情報共有をしておくことには意味があります。社外秘の営業情報としてまとめておきましょう。 また、お客様のお名前を公開することで、競合に次の売り込み先を紹介するようなことは避けたいので、このような場合も内部資料によって関係者だけの共有情報としておきましょう。
- ネットワーク外部性
新商品・新サービスが、ネットワーク外部性を持つ(フレームワーク)のであれば、この情報を調べて内部情報として共有しておくことは有効です。
要するに「関連お勧め商品」です。例えば、接続して使える関連商品や、インストールして使うと便利なアプリケーション、併用して使うと効果が高まる商品などです。特に、既に実績ある商品の紹介である場合はさらに有効性が高まります。
- 比較試験をしたデータ
また、社内での試験風景をスマホで簡単に撮影してYoutuberのように説得力がある映像資料を簡単に作れる時代になりました。積極的に記録をしておくことをお勧めします。
また、将来、本格的な映像資料を作って宣伝を仕掛ける時にも、こうした内部で製作した映像資料は検討材料として有効になります。
- 社会背景
商品に関連する社会課題や、法令の制定などの外部要因の情報をまとめて資料に記載しておきましょう。具体的にはSWOT分析で考察した内容を資料としてまとめておくことで、営業トークを補足する資料となり、販売活動を下支えすることができるようになります。
ポイント2
その他のポイントを以下に列挙します。ここまでに列挙したもの以外でも必要と感じられることは記録をしておきましょう。内部資料ですから臨機応変に考えてください。
- 軽微な差別化ポイント
たとえ競合の商品に対して優位性がある機能や性能であっても、それが容易に真似され、短期間にキャッチアップされてしまうようなレベルのものであれば、カタログやWebに掲載しないほうが良いかもしれません。
『 競争相手にマネされ優位性が失われるデメリット > 顧客に知れ渡るメリット 』を考慮しましょう。
こうした軽微な競争優位性は、営業が商談の最後の段階で、顧客を説得する際に使う情報として“取っておけば良く”、一般公開はせずに関係者内だけで共有しておく方が無難です。(奥の手として隠しておきましょう。) カタログやWebページには書かないものの、こうした情報を社内情報としてまとめておきましょう。ベテラン営業が、商談の決め手に使っているネタをうまくまとめることで、新人営業にを戦力として使うことができるようになるかもしれません。
- カタログなどに、自分達の口から書きにくいこと
「マスコミが記事として取り上げてくれるならばいいけど、自分達の口から言うのはちょっと・・・」というネタも考えられるならば、書き並べておきましょう。広報活動の機会に、記者に伝えることで記事にしてもらえる可能性があります。
例=「『デザインが優れていて気に入っている』という声をいただいております」
例=「**の箇所は、開発でちょっとてこずったのでノウハウと自信があります」
日本人は、苦労話や裏話が好きです。(論理的ではありませんが)。広報活動の機会はいつ到来するかわかりません。あらかじめネタを考えておけば、チャンス到来時に記事となり、商品アピールの後押しとなります。
- よくある質問
FAQ(良くある質問)を新商品の販売前に想定してまとめておくことは良いことです。そして、この情報の一部はWebページなどで一般公開していくことも良いでしょう。
しかし、上記の数々の項目のように、一般公開には適さない内容で、関係者だけが使う「営業トーク」に留めておきたいような情報もあります。これらを含めて、列挙して資料化しておくと販売活動の円滑化・高位平準化(例=新人セールスの即戦力か、応援部隊の戦力化)に繋がります。
最後に
内部情報の資料を纏め上げる作業は、ナレッジマネージメント(知識創造論)の具体的アクションの一環にもなります。次の新商品・新規事業を産み出していくためにも有効となります。