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AI脅威論は見ていて楽しい

2023.12.01
AIが人類を滅ぼす
 AIによる脅威論が様々な方面で騒がれている。今度のG7サミットでも取り上げられるネタになるようです。
 たしかに、そう遠くない未来に、AIによる犯罪は発生するだろうし、AI搭載の武器が戦場を変化させ、人を殺すようなことも発生するだろう。
 しかし、私はAIの発達と普及を脅威だとは思いません。それは、インターネットの普及による社会の大きな変化と同じ程度の問題だと思っています。もちろん、インターネットの普及により、犯罪が促され、命が奪われるようになってしまったこともあるでしょう。しかし、それ以上の恩恵を人々はインターネットの普及により享受しています。このためインターネットの発展と普及を脅威と考える人は、ほぼいないのが現実でしょう。

 AI脅威論は、車の普及により事故が多発することを懸念するものと同じようなものと考えても良いでしょう。たしかに、車による事故は無視できない考慮すべき問題です。実際、多くの国では、戦争で死ぬ人よりも多くの命が交通事故で奪われ続けています。しかし、車の普及を停止させるような働きかけは世界中のどの国を探してもありません。
 車の普及によって、多くのビジネスチャンスと雇用が生まれたように。また、インターネットの普及によって、多くのビジネスチャンスと雇用が生まれたように。AIの発展と普及も、多くのビジネスチャンスと雇用を生むことは確実です。今はまったく想像もできないような新しいビジネスが立ち上がることのになるでしょう。
 それゆえ、AIに規制をかけて進展にブレーキをかけるようなことはして欲しくないと私は願っています。政治的に、あるいは知識人と言う方々のマスコミでの登場による扇動で。
 そして、インターネットが普及したからと言って、ビジネスの戦略論やマーケティング論が無効になるような変化が発生しなかったように、AIが発達しようと、普及しようと、ビジネスの戦略論やマーケティング論がビジネスパーソンにとって大切であることは変わらないであろうと、私は想像しています。


江川の100球肩

2023.3.21
WBCのルール説明(NHKより)
 ここ最近、WBCの話題で野球の報道が盛り上がっています。そうした報道を見て感慨深く思うのが、投手の投球数の制限です。100球も投げる選手WBCでは一人もいません。
 一方で、かつての日本の野球界では、先発投手は120球ぐらいを投げるのが当たり前でした。「江川の100球肩」と言われて、江川選手は100球を超えて球威が落ちることを激しく非難されていました。「苦しくても投げ切る精神力が一流の証し」根性論が幅を利かせており、高校野球でも、多投した選手が美談として語られていました。
 この時のアメリカ(大リーグ)では、統計学、医学・生理学、スポーツ科学などの見地に基づいて、多投は不合理だと気付き、投球数の制限が行われていきました。

 さて、ビジネスの話題に転向しましょう。日本の企業では、この野球界に見られたことと似たようなことが散見されると私は感じてしまいます。いわゆる、根性論の営業や、根性論の開発などです。(法令を破る不正な開発を行う企業がしばしば発覚しています)
 過去の知見から得られた論理的な思考が無い”根性論だけ”に陥る組織は、社会の害悪にしかならないと思うのです。よって、ビジネスパーソンは誰でも、自らの判断を誤らないために、経営学のフレームワークを教養として知っておくことは欠かせないと思います。
 ただし、執念をもってやり抜く根性は今も昔も変わりなく必要で、「ワークライフバランスなんてクソくらえ」と私は思っています。ただし、これは全否定ではなく「戦える人は戦えばいいし、戦えない人は心身を守ったほうがいい。」と思うだけで、多様な生き方を認め合う社会になって欲しいと思うのです。

 今年のNHK高校野球中継では投球数が画面に表示されるようになっていました。「よかった」と思います。でも、TVに映る選手は全員が丸刈りで根性論時代の風景と変りません。「なんと前近代的な姿なんだ」と私の目には映りました。未だ古い体質がアチコチに残っているのだろうと思わざるを得ません。そして、高校野球の指導者と日本のビジネスの指導者は同じ世代の人間ですから、ビジネスの場で同様のことが続いているだろうとも。


頑張れバカなチャレンジャー

2023.1.9
ソニーのEV2023
 昨年に続き、CESにソニーがEV車を展示していることが報道されていました。そこで昨年に続き同じテーマで考えてみました。

 ソニーがCESで展示した物体は、ホンダとのコラボレーションによって、ホンダ製の車体にソニーのエンタテイメント機器をぶち込んだ車両として作った物を展示していたようです。
 しかし、この報道を聞き、私は「だみだこりゃ」(いかりや長介風に)と思いました。このままでは、ホンダ車のカスタマイズカーになってしまう。であれば、ソニーが自動車の業界に新規参入してみる意味がほとんどありません。

 もちろん、ホンダから様々な車両の知識と経験を得られれば、手堅い商品が作れるでしょう。けれども、そうなれば、所詮、今までの車作りの枠内に留まり、新参者ソニーが乱入したことで期待されるブレイクスルーには至らない。
 ロボット犬「aibo」、 金融「ソニー銀行」、ゲーム機「PlayStaition」を作った時のように、メジャープレーヤー(ここではホンダのこと)の手など借りず、また、”AVのソニー”の呪縛にも縛られずに、驚くような新商品を、尖った人材で作り挙げてほしいと願っています。

 イーロンマスクが10年前にやったことを、ソニー社内の尖った人材ならばできないハズは無い。日本ではアメリカのように投資の自由世界が発達していないので、ビッグな起業のためにビッグなお金を得ることが難しいのが実情。だから、企業内起業ということに期待するし、それを許す企業風土のあるソニーに期待したいのです。
 ホンダも、ジェット機を作ってしまうような、凄い起業力がある企業文化を持っているので、ホンダにも別途、期待しています。


社会課題の解決に、課税か寄付か

2023.1.5
課税されるか 寄付するか
 首相の念頭記者会見で「異次元の少子化対策をする」とのこと。これと連動してか、東京都知事も子供に毎月5000円を給付すると発表。遅ればせながら良いことだと安堵しました。今の日本における最優先事項は、子育てに対する投資を官民で進めていくことでしょう。子供を育むことに陰りのある社会が発展することは考えられません。そのツケはいずれ官民に及びます。この件で私は、未だに学校給食の無償化が実現していないことに大きな疑問を感じています。

 では学校給食の財源確保のためにどうするのか。予算の奪い合いの中で、より優先度の低い取り組みから奪い取ることも考えられますが、長期間に渡って安定した財源を確保するためには、今までに無い新たな財源を妥当性のある内容で確保することを考えなければなりません。贅沢を行う国民から広く徴税して、次世代を担う子供達にお金を回しましょう。

 そこで、一案としてペットフードに課税をしてこれを財源とする目的税の法律を制定したら良いと思います。ビールの酒税と同じぐらいで良いでしょう。これだけでは学校給食の全ての財源を賄えないかもしれません。足りなければ、他にももっと考えていく必要があります。(例=コーヒー、紅茶にも課税など)
 そもそも、今や小学生よりもペットの数が多いという状況です。もしかしたら人類が始って以来の異常事態かもしれません。子供を産み育てることよりも、愛玩動物を愛でることにお金を投じる社会は歪んだ状態ではないでしょうか?
 もちろん、趣味でペットを飼うことは個人の自由です。しかし、愛玩動物を愛でることは生活に必要不可欠な行為ではなく一種の贅沢行為と言えるでしょうから、飲酒レベルで生活に必要不可欠とは言えない贅沢行為から徴税することは妥当性があると言えるでしょう。
 あるいは、企業自体が社会問題に気付き、寄付を行うことも問題対処の一つです。受動的に課税を待つか、能動的に自から動くか。行政頼りではなく日本の企業にも行動が求められます。


カリスマリーダーを持つ組織の脆弱性

2022.11.15
NHKの報道より(11/14)
 ウクライナの戦況から目が離せません。東部の奪還に続き、南部でも要衝ヘルソンを奪還して、侵略者を徐々に追い返すことができていることの報道を聞くと安堵します。
 とにかく「力による現状変更」が成功しなくて良かったです。今のところ同じようなマネをする指導者が出てくることが抑止される結果となっています。
 課題や今後の見通しについて、多々報道され、論じられていますが、ここでは思想・心情的なことはひとまず置いておき、このWebページの趣旨である「新商品・新サービスを担うリーダーにとって参考になる」知見が得られるか? という点で考察してみたいと思います。

 「軍隊を侵攻させ地域を制圧して成功を収めるか」と「新商品・新サービスを投入して市場で成功を収めるか」は、規模が段違いに違えども、複雑系リーダーシップの発揮が肝になる点では類似しています。
 恐らく、クレムリンでは、侵攻の計画時にシナリオを良い方向でも悪い方向でも複数の可能性を考察して資料を仕上げて指導者に届けていたとは思います。しかし結果は、最も悪いシナリオよりもさらに悪い展開になってしまったのだろうと思われます。
 そして、独裁者を頭に頂く組織というものは、予想を超えた変化が起きた時、機敏に対応することが難しいという教訓がこの事象から得られます。また、どんなにシナリオを検討しても結局は「やってみないとわからない」と言うこともです。

 ならば、新商品・新サービスのリーダーは、複雑系リーダーシップの発揮について知見を得ておくことが必要でしょう。結論だけ簡単に言えば、カリスマリーダーの必要性は認識しつつも、それだけに頼らないチームワークが必要ということになります。
 どんなにシナリオを検討しても結局は「やってみないとわからない」というのが事実だとしても、ならば「出たこと勝負で!」という考え方に安易に流れてしまうワケにはいきません。フレームワークを利用して「できるだけ考える」ことをしてきたリーダーとチームだけが、予想外の展開になった際に臨機応変に有効に対応できるからです。


マーケティング4Pで考察2

2022.7.2
選挙の争点も
 前回の話題の続きです。
 ビジネスパーソンだけでなく、行政もサービス業の一種ですから自治体職員や首長などの皆さんにもマーケティング4Pのフレームワークを活用してもらっても良いと思います。
 政治家の皆様も「財政の引き締め!」「身を切る改革!」のような理念から発する提案をおこなっていただくことも大事ではありますが、いざ、その活動計画を具体化していく過程になれば、「マーケティング4Pで考察して**する **しない **できる **できない 」と、実現性・有効性を分析して民意に問うような提言もしてもらいたいと思います。  駅前の整備も、幼稚園の新設も、防災の設備整備も・・・・
 これらは新商品や新サービスを市場投入することと類似する話ですから。つまり、このWebページの趣旨にも連動する話題です。

 近づく選挙のために、様々な意見や提案が飛び交っていますが、「マーケティング4P」のフレームワークはこの世界でも通用するものと思いまして、先の話の続きとして述べさせていただきました。
 もちろん、この分野の全てに適用できるとは思いませんが、ビジネスで培われたフレームワークの中には、政治や行政でも使えるものが少なくないと考えても自然だと思います。
 主要なフレームワークの知識は、ビジネスパーソンだけでなく、社会を動かす人々の教養としてもっと広がってもらいたいと思います。


マーケティング4Pで考察

2022.6.12
マーケティング4Pは
テーブルを支える脚のイメージ
 5月の連休で相当な人々の動きがあった後でも、コロナが蔓延して非常事態に戻るようなこともなかったので、ようやくコロナも終わりが見えてきたというところでしょう。
 もちろん、まだウクライナ戦争、米国インフレ、中国(上海)の長期ロックダウンなど、不安定な要因も続きますが、3年も続いた異常事態が収まって、これからの日本は明るくなっていくことが期待できると思います。
 長く下を向いて息を殺して過ごすような日々が続いたので、なかなか日本の社会が急にアクティブに動き出すようなことは難しいのかもしれませんが、まずは「自信をもって動く」ことではないかと思います。根拠はありません。楽天的に。「なんとかなるさ」の 植木 等 の世界観です。

 さて、最近、過去分析や思考実験などをツラツラと行って思うことは、「マーケティングの4Pは、裏切らないフレームワークだ。」です。
 成功した新商品や新規事業は、4つのポイントで考察すれば、ほとんどの場合で「説明がつく」ということです。逆に、失敗したビジネスはこの4つの視点での考察が不十分であったと説明できるものが多いと思います。
 もちろん、4つの視点で考察してOKだったら、必ず成功を保証する必要十分条件を提示してくれるフレームワークとまでは言えませんが、少なくともマーケィングの4Pはビジネスの必要条件を検証する計測装置になるでしょう。
 ITやドーローンのような"いかにも新規事業"のようなビジネスではなく、とある街にパン屋を開店する時も、とある地方で産物を売り出す時も、幼稚園や介護施設を新たに開園する場合にでも、通用するフレームワークです。
 有名なフレームワークであっても、それを適用してビジネスを考察するには前提条件が少なくありません。これに対して、マーケティング4Pのフレームワークは、条件がゆるいので、新規事業を考察する多くの方々にとって使いやすい(失敗しにくい)フレームワークといえるでしょう。


中途半端な理解は危ない

2022.5.22
程良くお酒を飲みながら
 先日、それなりの経営責任を担ってきた経験のある人とお酒を飲みながらお話をさせていただく機会があり、フレームワーク活用の話題となりました。
 彼は「いつも■■のフレームワークで検討するよう指導している」とか「★★のフレームはダメだ」と語ります。でもこういう話を聞くと、私は『何かヤバイなぁ』『よくある話だな』と思わざるをえませんでした。
 そもそも経営学で用いられるフレームワークは、三平方の定理のような絶対的な定理ではありません。どんなに有名なフレームワークでも活用には前提条件があり、いつでも完璧に適用できるモノでもありません。同様に生き残ってきたフレームワークは何らかの有効性があり常にダメと判断するのも良くありません。
 書店で「うまく行く**の方法」や「**で90%成功」などというタイトルの本が良く並んでいますが、そんな”うまい話はないだろう”ということと同じです。

 つまり、どんなフレームワークでも使う際には、[条件を見る]こと、[限界がある]こと、[一つのフレームワークだけではなく組み合わせて(補い合って)使うことが望ましい]ことを多くの方々に知っていただきたいと願っております。(彼を含めて)
 少数のフレームを活用し、また、幾つかのフレームワークを無効と判断して使うことを遠ざけてきたことで、彼は一定の成功をしてきたのかもしれません。でも今後、彼自信が、また彼の部下が経験することになる経営環境は、彼が成功してきた時とは同じではない可能性も高い。だから、フレームワークに対する理解をもう少し広い視点で、もう少し柔軟に理解してもらえたら良かったのにと思いました。中途半端に知っているとかえって危ない感じがします。
 まあ、お酒の席でもありましたので、あまり私の意見を強く述べるようなことはしませんでしたが。(ずっと昔に、そういう話で、頭からお酒を掛けられてこともありましたので)


戦争

2022.3.27
ウクライナ
 ウクライナで戦争が始って1ヶ月が経過しました。毎日報道を見ながら「力による現状変更の試み」が失敗に終わることを願っています。
 驚かされることばかりですが、かつてない情報伝播の変化には特に驚かされました。市民の誰もがスマホを持っているので、多くの人々によって映像と共に現場の状況がクラウドにアップされ、情報が世界中に伝播する時代となりました。また、ドローンによる映像にも驚かされます。軍事用の高価な機材ではなく、市民の誰もが数千円~数万円で買える程度の機器で、まさに俯瞰的に情報収集ができるのです。
 惨事の数時間後にはその惨状が世界に伝播してしまう。これからの軍事行動では司令官もこのことを意識せざるを得ないでしょう。不用意・不適切な攻撃は、後日、戦争犯罪人として裁かれることになります。(ただ、今のロシア軍の司令官にはまだ、この意識は乏しいでしょう。だからトンでもないことをやらかしてしまう)

 スマホとクラウドの登場が、戦争にも影響を与えるようになっていたとは、こんな出来事が起きる前には想像もしておりませんでした。
 かつて、蒸気機関の発明が産業を変え、社会を変え、政治を変え、思想や哲学まで変化を及ぼし、現在の資本主義・民主主義に至ったことは周知のことですが、これには半世紀以上の時を要しました。 一方、スマホ、クラウド、ドローンは十年程度の歴史です。この新参者の新商品・新サービスが日常での利便性の享受のみならず、こんな非常時に社会に影響を与える力を持っているとは思いもしませんでした。
 新商品が市民に普及することはこんなにも素晴らしいことだったのかと気付かされました。まだまだ発展して社会が良くなることに貢献すると私は信じています。そして、こんな暴挙は最初から行われるようなことがないような社会が、新商品・新サービスの市民への普及で実現すると。


バカなチャレンジャー

2022.1.10
ソニーのEV
 新年早々の米国CESにて、ソニーがEVの業界に参入する意向を表明しました。それを聞き、最初は強い違和感を感じました。モーターもバッテリーも作っていないソニーが???と。しかし、よくよく考えれば素晴らしいことだと思うようになりました。
 私達の世代ですと、ソニーはAV(オーディオ、ビジュアル)の会社というイメージです。もちろん、今ではAV家電は少数派で、主力事業は、ゲーム、音楽、映画、部品(センサー)、金融で収益を上げる会社となっていることは理解しています。そして金融を除けばエンタテイメント関連企業というイメージでソニーを理解することもできました。しかし、EVやドローンにまで領域を広げるようになると、そのイメージも正しくなくなってしまいます。

 私がソニーに素晴らしさを感じたのは、こういう新規事業に果敢に踏み出すことができるチャレンジャーを許す&育てる企業体質(ケイパビリティ)がある(残っている。育てている)ということです。もし「自分たちはエンタテイメント会社だ。」よって「これに関連する業界にて活躍しよう。」という自意識を持ち自らを縛っている風土の企業では、なかなかこのようにはできません。
 既存の事業からはみ出すことをやるチャレンジャー人材を育てることが下手だったり、当たり障りのない取り組みをする人のほうが昇格していくような企業では、このようなイノベーションのジレンマを超える新規事業を生み出していくことが難しいことは明らかです。
 だから、モーターもバッテリーも作っていないソニーが身の程もわきまえずに(つまり経営学的には合格点がもらえない)、EV事業に参入するということは痛快で素晴らしいと感じました。


ラグビーチームと新商品チーム

2021.5.24
ワイルドナイツ(福岡選手)
 昨日、ワイルドナイツがトップリーグの決勝戦で勝利しました。嬉しく思えます。5年ほど前からラグビーが好きになって良く観戦するようになりました。
 ご存じの方には『釈迦に説法』ですが、ラグビーは、体の大きな人、背が高い人、小さな人、スリムな人のいろいろな15人がチームになって試合を行います。見た目が違うように、それぞれの選手には果たすべき役割があります。しかし一方で、突進してくる相手を止めるために、その立場になれば、体の大小にかかわらず誰もが取り組まなければなりません。そこに「私は担当ではありませんので」と逃げる余地はありません。倍の体重の相手に食らいつく瞬間は、見ていて身震いします。

 数あるスポーツの中で、ラグビーは企業の活動に一番似ていると思うのです。担当や部署によってそれぞれの役割を果たすことが求められ、でも、全員に共通する役割もある。そして、倒されても倒されてもボールを繋ぎ前進させていく。そのためには、規律と戦略が欠かせない。(力まかせに、我武者羅に前に進むだけではない。)
 特に、新商品の市場投入時などは、まさにラグビー選手のようにチーム各員が状況を理解し自立的に動くことが大事になると思います。これがこのスポーツが好きになった理由ではないかと思います。
 実は、前々回のワールドカップの頃まで、私はラグビーについて全く知らず、そもそも何人で試合をするのかさえも知りませんでした。しかし、その頃に縁あって、ワイルドナイツのスポンサーをさせていただくこととなりました。新商品の宣伝などに選手の皆さんに協力をお願いさせていただく機会が多々あり、その際に選手に近づく機会も多くあったため、今でも親近感を持ち続けています。それゆえ、ワイルドナイツ応援に力が入りますし、ラグビーが面白いスポーツであることを知ってしまいました。また、今後、ラグビーが興業スポーツとして日本に定着することも願っています。


反知性主義は、ごく身近に

2021.4.3
渋谷駅前の風景
 趣味のトランペットの仲間と渋谷の楽器店を訪れるために、渋谷のスクランブル交差点を通過しました。TVでよく見る場所です。そこで「コロナにマスクなんか不要」というプラカードを掲げて街宣活動を行っている人々を見かけました。

 こういう方々を反知性主義と言うのでしょうか。300年前ならば「疫病は神の怒りだ」と人々を扇動するようなことも多々あったのかもしれません。 しかし、現代の人類には築き上げてきた叡智(細菌学、疫学、統計学・・・)があり、これらの知見に照らして考察すればマスクの有効性を否定することは説明困難でしょう。「自分はマスクをしない」とする主義の方々の自由は侵さないものの、他人に「マスクを外せ」と主張するのは穏やかではない活動だと思いました。
 ただ、まあ、ごく一部の人だから大勢に影響もないだろう とも。

 しかし、ふと思いました。ビジネスの現場ではどうだろうか?と。私の30年余りの企業内での経験の中でも、経営学等の社会科学の知見を知らず、使わず、自分の主義や経験でビジネスの主張をする方々も少なくなかったことか。いや、自分自身が、知見もなく過ごしてきた期間のほうが多かった。そう考えると、この渋谷スクランブル交差点でのコトは意味深です。
 私にとって気がかりなのは新商品・新サービスを育むビジネスの場です。若い葉が開こうとしている新芽を園芸の知見の無い人が時に枯らしてしまうことがあるように、日本の新商品・新サービスの創造の場においても知見の無い人が若葉を枯らせてしまうことが今も少なくないのだろうと、 で、知見を広めるためにはどうした良いのだろうと、 渋谷を去る頃になって電車の中で思いました。


今日は3.11

2021.3.11
窓辺にミニ発電所
 最近、私のスマホはクリーンエネルギーで動いております。

 窓辺に置く小さな太陽光発電システムを作り、これで充電をしているのです。構成は、1)10Wの太陽光パネル、2)バッテリー(350mlペットボトル程度×2程度の容積)、3)充電コントローラー(スマホ程度の容積)です。それぞれAmazon購入で数千円です。
 机の横の太陽が差し込む窓辺においておけば、およそ2日ごとに行っているスマホの充電に必要な電力は賄えます。また、充電式の乾電池(パナソニックのエボルタ)の充電もできるようにしておりますので、小型の電気製品(ラジオ、懐中電灯・・)などの災害用品も動かすこともができます。
 多くの家庭に同様の装置が普及して最低限の電力が自給自足できるようになれば、日常のエコ活動に加えて、万一の災害時にも大きな助けになると思っております。
 今日は3.11で、東日本大震災から10年の節目として、莫大な税金を投入した復興活動などが多数報道されております。でも、各自が最低限の電力は自前で確保できるような小さな自助活動を草の根的に普及させていくことができれば、(税金投入に頼るだけではなく)万一の災害時にも強い社会を作ることに繋がると思った次第です。


    

アップルの凋落

2020.10.15
iPhone12が発売されたが
 先日、アップルからiPhone12が発表されました。5G対応のスマホだとのこと。
 残念ながら、今のアップルのリーダーであるクック氏は経営者としては優れていても事業家としては全くダメなようです。残念でもあり、その能力の無さに興味が沸きます。
 たしかに、アップルはGAFAの一角で、だれもがうらやむ高収益事業の会社であり、ブランド力も世界トップレベルです。でも、今のこの状況を見ていると、私はこの会社の未来は先細りだろうと感じます。
 なぜって? 簡単です。新商品が出ないから? ジョブス氏が作った商品群をリニューアルしているだけです。植物に例えれば、青々と大きな葉をつけて生い茂っているように見えるけど、新芽が拭いていないような状態です。

 ジョブス氏がアップルを率いて活躍していた21世紀の最初の10年には、キャンディのようなカラフル色のiMac、半導体による音楽プレーヤーiPod、iOS、音楽配信・購入サイト、iPhone、iPad・・・と続々と新商品・サービスを世の中に出してきました。 しかし、彼の死後、アップルは新商品を生み出していません。watchがありますが、まだキャズム越えをしたとは言えないでしょう。
 たしかに、ジョブス氏のカリスマ的なカンによって数々のアイディアが産み出され、企業を引っ張る新商品が作られてきたのは事実です。だから、そんなリーダーがいなくなればその企業はもうおしまいなのでしょうか?いや違うはずです。
 例えば、ホンダは、本田宗一郎というカリスマリーダーが引っ張って企業を大きくしました。しかし、彼の引退後もホンダは世の中を驚かし業界の方向性を作り出すような新しい車、オートバイ、ロボット、飛行機・・・を世の中に送り出してきました。 つまり、ホンダイズムとも言われるカルチャーを本田宗一郎はこの企業に残して、彼が存在しなくても企業が持続的に発展することができたのです。当然ながら、本田宗一郎だけの業績ではなく、彼を慕う部下(教え子)達が、その路線を引き継いだからです。
 同様に、ソニーも森田&井深氏だけの会社に留まりませんでした。オーディアの名門企業としての地位は薄くなりましたが、未だにゲームに、映画・音楽に、スマホに、さらに金融にも・・・と、創業者のカリスマ性に起因する事業だけではない発展を遂げています。
 これに対しアップルはジョブスの後を継ぐ人達が新たな事業を産み出していません。ここからは想像ですが、ジョブス氏が去った後もアップル社内には挑戦する気風は暫くは残っていたと思われます。しかし、クック氏を始めとした(賢い)経営者達がそうした流れを押さえて株主達の要望に応える目先の益に走ってしまったのでしょう。
 実際、その昔のアップルも(賢い)経営者達が破天荒なジョブスをアップルから追い出して、結果として一時的には栄えたものの次第にアップルの経営を傾けることになってしまいました。それと同じようなことが起こっているのでしょう。
 私は、アップル株を持っていないし、スマホはAndroidなので、アップルの影響をほとんど受けない生活をしていますが、新規事業創造の経営をライフワーク的にテーマとしている以上、アップルの動向は少し気になるのです。頑張って欲しいけど、もうダメかなと感じました。


アフターコロナ

2020.08.25
松下幸之助氏の名言
 コロナ禍の後の世の中は大きく変ると言われております。この意見に私も同感です。
 この環境変化により死に絶えてしまう商品や事業も多々あることでしょう。名門・有名企業と言えども衰退、廃業して企業も少なく無いことでしょう。一方で、新商品・新規事業に取り組む多くの皆様には機会が拡大することは間違いないと私は考えます。
 では、どうすれば、死なずにこの危機を機会(チャンス)に捉えることができるのか?
 力を入れて探すのではなく、自然体で臨むことが肝心だと思います。
 松下幸之助の経営名言に「雨が降れば傘を差す」という言葉があります。当たり前えのことで、初めてこの言葉を聞く人は、何がそんなに名言なのかピンと来ないと思います。

 でも、こう考えれば、わかるのではないでしょうか?
 あなたの組織は、このコロナ禍の中の環境変化でも、今までのやり方を変えることが出来ずに、雨が降りはじめたのに今までと同じように(傘を開くこともなく)歩き続けてはいるようなことはないでしょうか?(外からの圧力で在宅勤務になったぐらいの変化ではダメです。)
 もし、各部署のリーダー達が個々の判断で、この変化に応じた行動に移れるような組織であればこの組織は生き残り、さらにもっと発展することもできる可能性があると思います。一方、各部署のリーダーが個々に判断して行動することができないような息苦しい組織や、そうすることを必要と感じない程に既存の環境と既存の組織に飼い慣らされたリーダー達が多く集う組織であれば、その組織の生き残りは難しく未来も開けていないしょう。
 もしかしたら、経営トップから傘を差すように指示が出るまで、組織の皆は、傘を差すこともなく今までと同じようにどしゃ降りの雨の中でも歩き続けていていくようなことは無いでしょうか?ならば末期的です。

 あなたのビジネス遂行環境の傘の開き具合はどうでしょう?  残念ながら、傘があまり開いていないような組織や環境下にあるリーダーは、組織を出て、一旗揚げることを考えたら良いと思います。これは私自信の反省から感じる提案です。私自身が、組織に飼い慣らされていて、機会やそれを活かす能力があった頃に、組織を離れて一旗揚げる気概を持っていなかったことを反省に思っているからです。組織の中にいることが居心地が良く、また終身雇用の考えに浸っていた自分だったのです。


コロナ禍での新商品・新規事業の凍結

2020.08.09
業績悪化
 ここ最近、新型コロナウィルスの疫病被害による業績悪化を発表する企業が続々と出ています。
 そして、業績の悪い企業内では、経費削減のために新商品・新規事業を凍結する決定を下しているところが少なくないであろうと推察されます。恐らく、今日も日本のアチコチで、落胆している新商品・新規事業のリーダーが発生しているのではないかと思います。
 残念ながら戦略論から導ける「業績悪化時の新商品プロジェクト生き残りの方策」は無く、精神論となってしまうのですが、新商品・新規事業のリーダーには頑張ってもらいたいと切に願う次第です。
 プロジェクトの凍結や終了を”黙って受け入れる”ようなことはせずに、なんとかプロジェクトを生き延びさせる方法を考えて、様々な活動をして欲しいと思います。悪あがきです。上位者に対して、縮小してでもプロジェクトの継続がなされるように提案を考えて受け入れさせる努力を行ってもらいたいですし、また、残念ながら公式に組織からプロジェクトが抹消された場合には、スカンクワークスに転じて関係メンバーで、裏プロジェクトとして継続させ続けることも考えてもらいたいと思います。そのためには、プロジェクトのメンバーへの動機付けも欠かせないでしょう。また、周辺メンバーには見て見ぬふりをしてもらう協力を得ることも欠かせません。
 新商品・新規事業として成功した事例には、一度はプロジェクト解散の憂き目にあったものの数年後に復活させて、新商品・新規事業を成功させたという例は少なくないのですから。
 ごまめの歯ぎしりに過ぎませんが、ここに日本の未来がかかっていると言っても過言では無いと思います。


マーケティング戦略と事業戦略

2020.07.26
 昨日、大型ショッピングモールで女房と娘が服選びをしている長い時間を潰すため、その施設内の書店に行きました。
 こういう大規模な書店では、ジャンルごとに棚が分けられ、戦略や経営に関わる書籍は店舗の奥の方の棚に並べられてるものです。 そして多くの場合、戦略経営に関わる書籍は、マーケティングや金融などと同じ一角にあるものです。この日も、そうした棚の一角に立って、何か興味が沸くような本が無いかと眺めていました。 その時、気になったのがマーケティングやファイナンス系の本に比べて戦略経営に関する本が少ないことです。今更のことではありますが、気になりました。
 たとえどんなに素晴らしいマーケティング戦略を立案できたとしても、事業戦略の考察が未熟であれば、砂上の楼閣となってしまいます。マーケティングやファイナンスなどの知見の重要性は百も知った上で、それでも、世間の関心は、根幹よりも枝葉に向いているのだと認識させられました。もちろん、マーケティング、ファイナンス、人事、生産などの機能別戦略を軽んじようと言う意図ではありません。私自身はマーケティングも専門分野としております。日本のビジネスパーソンには、もっと戦略経営に目を向けてもらいたいと書店で棚の前に立ちながら思った次第です。
 さて、結局、手にしたのは 「邦人奪還」という自衛隊OB著作の軍事シミュレーション的なフィクション小説でした。 この小説では現場の精鋭達を活かせない上級幹部達が描かれていました。まるで日本の企業で戦略経営を司る能力を身につけずに出世する幹部の姿にも重なって見えました。戦略が薄いのが日本の姿の実情なのかもしれません。ビジネスの戦争を勝ち抜くために事業戦略の重要性を日本のビジネスパーソンに少しでも広めていきたいものです。


会社を作りました

2020.07.01
strategicbooster
ストラテジックブースターWebページ
 新商品・新規事業をリードしていくために有効な知見を、このWebページで発信して様々な方に見ていただく(待ちの姿勢)だけでなく、出かけて行って相談に乗らせていただく(攻めの姿勢)活動も必要だと考えて法人を起こしました。
   ストラテジックブースター株式会社
 具体的に個別の相談に”お仕事として”、乗らせていただく際には、こちらの会社をプラットフォームとして活動していこう思います。以降、お見知りおきいただけますようよろしくお願いします。
 これにより、(個人の活動ではなく)法人として様々な企業とコラボをしたり、専門知識を持った方を顧問としてお迎てして一緒に具体的な問題解決に参加していただくことも可能になり、新商品・新規事業をリードしていくために有効な知見を日本のビジネスパーソンに広げていく活動の範囲を広げていけると期待しております。
 しばらく、このWebページの更新が止まっていたのは、こちらに工数を投じていたからでした。ご理解、ご容赦ください。


パナソニックは企業文化の抜本的な改革が必要なのか

2020.04.07
東洋経済web20200405
東洋経済Webページ20200405
(C)東洋経済新報社
一昨日の東洋経済オンラインの記事から思うことです。
https://toyokeizai.net/articles/-/339442?page=6
  主題 パナソニックの経営「わかりづらさ」に募る懸念
  副題 企業文化の抜本的な改革は本当に必要なのか

 この記事では、パナソニックの津賀社長が「パナソニックの文化を変えたい」と考え、シリコンバレー系企業の幹部職をスカウトしてパナソニックの幹部に据え、松下電器産業に刷り込まれた悪しき文化を変えようとしている姿が気になると言っております。結論として著者は『パナソニックは、服装を変えシリコンバレー・テーストを「輸入」するのも悪いとは言わないが、その前に、創業者が築き上げた「経営の文学性」を見直したほうがいいのではないか。』と結んでいます。
 私は、パナソニックのコネクテッドソリューションズ社(CNS社)で、フリーアドレス化、服装カジュアル化、そして、MicrosoftやIBM等からの中途入社幹部に接して困惑した経験を持つので、この記事の指摘に同感する方向で非常に興味が沸きました。
 CNS社の改革が始まった時に、私もパナソニックの悪い面も多々承知していたので、幹部層に新メンバーを迎え入れることで企業文化が良い方向に進むのではないかと期待もしました。そして、松下の企業文化を熟知し、かつMBAホルダーでもある私ならば両者を結んで改革に寄与でき、退職前の最後のお役立ちができるのではないかとも思ったのです。しかし現実は違いました。半年ほどで疑問に感じ、1年で確信に至りました。
 たしかに、赤字を垂れ流していた時の危機対応で「破壊」する時は、企業文化を変える改革も必要でしょう。しかし、その後、「創造」に転じた際には、企業文化を活かしたマネージメントをしなければ創造がうまく達成できないとその時の経験から感じています。例えるならば、外資系幹部をいくら導入しても、それは、犬の体に猿の脳みそを接合してみる試みのようなもので、木には登れないし、犬の持っている抜群の嗅覚も活かせないものとなります。(両者が不幸になります)
 経営学的に説明すれば、ケイパビリティを無視した企業改革は無理だと感じたということです。先の猿と犬の例で挙げたように、素晴らしい経験と戦略を生み出す脳があったとしても、犬の体に移植しては効果を発揮できません。一方で、脳に合うように犬の体を作り替えるには多大な時間が必要です。だから、犬の体(ケイパビリティ)に合せた企業改革が現実的なのです。また、記事の「経営の文学性」はダイナミックケイパビリティと読み替えれば流れが読めると思います。
 一方で日産のゴーン改革を振り返ってみました。ゴーン氏は、日産の改革のために欧米企業から外人幹部を続々連れ込むようなことはしませんでした。 たしかに、大赤字の止血のため乱暴にも見える「破壊」をゴーン氏は行いました。しかし、「創造」の段階では、日産が売れる車、儲かる車、上手な売り方・・・を編み出していくために、社内のケイパビリティを活かした改革を支援し、その定着にも気を配ったりもしたのでした。 具体的には、日産の中堅社員によるクロスファンクショナルチームを多数立ち上げ、現場の発想で現場の改革を行う活動や、会議のやり方と意志決定のやり方の変革です。
 だから、パナソニックを企業改革で立て直すならば、各現場の上級リーダーをシリコンバレー風にするのではなく、現場を活かす改革を実現した実績を持つゴーン氏をCEOに迎えれば良いと思うのです。もちろんゴーン氏は大阪には来訪できないような状況ですから、パナソニックの本社機能を門真からレバノンに移すことになりますが。
 ゴーン氏の招聘は半ば冗談だとしても、彼が実施した企業改革の手法は、パナソニックは試してみる価値はあると思います。そのためにも、ゴーン改革を見直す価値があると思います。


ゴーン改革・中村改革

2020.04.04
ゴーン氏リバイバルプラン
リバイバルプランの発表は1999年10月
(C)共同通信社
 ベイルートへの逃亡劇で、すっかり名声が落ちたカルロス・ゴーン氏ですが、彼が日産自動車を倒産から救った功績は消せません。直接的には約20万人?の日産社員の雇用を守ったのです。さらに関連会社や下請けを含めれば、少なく見積もっても3倍の60万人の雇用を守ったと推定できるでしょう。そして、彼らの家族も含めれば100万人超の人々の生活をプラスに向けた功績は拭いようがありません。清廉潔白だが無能な経営者よりも、100億円を着服してでも100万人の生活を守ることのできる経営者のほうが優秀で、社会に必要であると私は思います。
 さて、私はカルロスゴーンとは無縁ではありません。半分、冗談ではありますが、知り合いの知り合いであることは事実です。
 現在、中央大学 国際経営学部で教鞭を取る木村教授とは、MBA在学時代に同期の学生として知り合いました。彼が博士課程まで進み、博士論文の研究対象としたのが、日産のゴーン改革、松下の中村改革でした。(木村氏の博士論文の指導も河合教授でした) このため、ゴーン改革の前後に日産の副社長を勤めた楠見氏のインタビューに度々同席させていただき(フランクな飲み会も含めて数十回を数えた)、一般にはあまり報道されていないゴーン氏の経営改革の発想と活動を経営学の視点からいろいろと教えていただき、分析をさせていただきました。
 そろそろこの時に得た情報を公開しても良い頃と思っております。なにしろ遠く去ったゴーン氏が私を訴えることもできなくなっている状況でもありますので。結論だけを先に言えば、ゴーン氏は、一般に知られる欧米流とは違う方式で日本企業の再生に必要な経営対応を果敢に実行しました。その知見をもっと分析して横展開できるようにすることは、経営が芳しくない多くの日本企業の再生にもきっと役立つことになると思います。もちろん、現在のパナソニックもその対象の筆頭と言えるでしょう。
 また、木村氏の研究に参加させていただいた際には、自らが勤めていた松下電器の中村氏の改革もよくよく観察しました。中村社長が「破壊と創造」の改革を実施している当時、マスコミから高く持ち上げられたものの、現在はプラズマディスプレイへの誤った過大投資で企業価値を損ねた戦犯のように扱われていることが多いのが実情でしょう。しかし、私はそう思ってはおりません。研究すればするほど、中村氏が偉大な改革者であったと確信できるようになってきました。では、なぜ、松下電器の経営は未だ悪化し続けているのか?それは改革に応えることができなかった多くの松下の社員にダメな点が多々あったからだという結論になります。そして私もその一人でした。
 ゴーン氏の改革の深読み、中村氏の改革の再考察、中村氏の改革に応えられない優秀なのに弱い松下の社員、について今後、整理して発信をしていきたいと考えております。


このホームページの起点となるもの

2020.04.01
日本企業における失敗の研究
 「日本企業の失敗の研究 (ダイナミック戦略論による薄型TVウォーズの敗因分析)」という書籍が、本Webページ作成の原点になっております。それゆえ、いくつかの失敗事例がここから引用されております。
 この書籍の著者の河合名誉教授は、私のMBA卒業論文の指導教授です。卒業後に先生に誘われた数名でこの書籍化のルーツとなる研究に私も参加させていただきました。(私の書籍化への貢献度は20%弱ぐらいでしょうか?それではちょっと多過ぎかな?)
 この研究では、20世紀後半から薄型TVの各社の開発、生産、商品化の経緯を調べました。新聞や雑誌に発表された新商品の開発状況や関係者のインタビュー記事などの公開されている事実情報(ファクト)を時代を追ってまとめました。(私自身は、TV事業に関与していないので内部情報暴露のような内容ではありません)
 液晶ディスプレイに賭けるシャープ。プラズマディスプレイに集中させたパナソニック。どちらつかずの日立。出遅れたソニー。虎視眈々と追跡するサムスンなど、最初は多数のメーカーが競争に参戦していました。しかし、競争の中で次第に脱落する企業が出てきます。脱落した理由は何か?生き残った理由は何か? 河合教授の学術的な分析から敗因分析が解説されます。そして失敗に学ぶ提言が解説されています。学会の発表にも展開できる資料です。
 でも、学術書のままでは多くの普通のビジネスパーソンは敷居が高いことは否めません。また、社長や彼を取り巻くクラスの幹部には意味があるテーマになるかもしれませんが、事業部長から現場のリーダーに至るレベルのニーズには、このままでは合わないと感じました。ダイナミック戦略論よりも基本的なフレームワークを利用するほうが現場向きだし、薄型TV以外の普遍性も欲しいと思いました。そこでビジネスの最前線で戦っている現場の実務リーダーの皆さんが必要とする、一般的なビジネスパーソンの視点で、新規事業を成功に導く(失敗の確率を減らす)ための参考になる基礎的なフレームワークと実践的なノウハウを提言することも必要だと感じました。
 そして、実践の現場を過ごしてきた自分ならばこの役目が果たせると思いました。また、Webページで公開することで興味をもっていただける方々に情報を伝えられると思いました。新商品・新規事業を担うリーダーの方がアクションを考察する際に、このWebページが考察の一助となることを願ってます。内容のアップデートを続けていきたいと考えてております。

日本企業における失敗の研究 ダイナミック戦略論による薄型TVウォーズの敗因分析
  著者 河合忠彦 筑波大学名誉教授
   出版社のホームページはこちら


はじめに

2020.04.01
パナソニック歴史館 と 松下幸之助像
 私がこのページを作る動機を持ったのは、松下電器産業株式会社(現パナソニック)に入社し30余年の歳月をこの組織で過ごしたことが背景にあります。
 期せずして入社した会社でしたが、すぐに松下電器の一員になれたことを本当に良かったと思いました。言い方は悪いですが、まるでヤクザにも似て『この組織(松下組一家)のためなら、一命を賭しても与えられた任務をやり遂げる』と忠誠心を強く抱いたものです。そう思わせる素晴らしい風土の会社でした。上司として私を導いてくれた方々も素晴らしい人が多かったと思います。
 しかし、21世紀に入り、優良企業と言われた松下電器がどんどん凋落していくことを目の当たりにします。幸い、自分が関わった事業は社会貢献できた(つまり黒字経営)ことが大部分でしたが、企業全体としては、大きく凋落しました。どうして愛する組織がこうも無残な姿に陥ったのかと悔しく、原因を理解したいと思いました。そう思って40代の前半に国内MBAに入学しました。当時、経営状態が著しく低迷していたことから残業ゼロ規制が続いたために大学院に通うことができたのは皮肉なものです。 大学院卒業後も、パナソニックを含む電機業界の経営課題を研究・考察し続けました。指導教授の誘いを受けたことも励みになり研究を続けました。
 こうした経緯で松下電器を典型例として日本企業が衰退する課題と対応方法を考察した成果は、自分で納得するだけに留めずに後進の皆様のために説明することが経験した者の責務だと思いました。私には教授のような学術的な視点からの解説はできませんが、現場で実践を踏んできた自分が、同じく現場で戦う中堅リーダー達に伝えることはあると思ったのです。
 もう1つの動機は、松下電器の創業者の松下幸之助氏の生き方、考え方に深く感銘を受けたことです。私が松下電器に入社して最初の10年を過ごした期間は、まだ松下幸之助スピリットを至る所で感じることができ、若い身に深く染みませることができました。経営者としての視点のみならず、哲学者としても素晴らしいと思います。この松下幸之助氏のアクションを現代の経営学で分析すれば、今の日本企業にも役立つ普遍性の高い戦略が見えてくるとMBA在学中に再発見し、想いを高めてきました。