トップフレームワーク5Forces

5Forces分析

5Forcesの重要度ランキング

重要度 C
リーダー必要度 ★★☆☆☆ 教養 用語として知っておく教養レベルと言えるでしょう
理解容易度 ★★★★★ 非常に容易 あたりまえのことを振り返るだけ。
活用容易度 ★☆☆☆☆ 困難 革漸進的な新商品には良いチェックリストだが、活気的な新商品には適用不能。


はじめに

 新商品・新規事業を担うリーダーにとって5FORCES分析は、理解しておくことが望ましいフレームワークの一つです。ビジネスパーソンの基礎教養として、時には無知であることはちょっと恥ずかしい場面があるくらいです。内容は非常に簡単なので理解し易いものです。
 ただし、これから市場に投入する新商品・新規事業が画期的であればあるほど、そのリーダーの方にとっては役に立たないフレームワークでもあります。 こうした場合でも、このフレームワークを良く理解しておくことで、使える条件がわかれば、変に迷わされないで済むようになります。
 いずれにせよ、まあまあ知名度のあるフレームワークなので、基礎教養として押えておきましょう。 逆に知っておかないと、著名なコンサル会社のアナリストが5FORCES分析のフレームワークを駆使した資料で、あなたと組織の面々を煙に巻くようなプレゼンをしてくれるかもしれません。 変に納得させられてしまわないように防衛的な面からもこのフレームワークは把握をしておきましょう。


概要

5Forces分析
5つの視点で競争環境を考察する

 うまい経営をするならば、儲かる環境に身を置くこと、そして環境を分析するには5つの要素で競争の状態を分析しようと言うフレームワークです。釣りの達人ならば魚が釣れる竿を下ろすポイントを知っています。同じように、ビジネスがうまく行くポイントに進出しましょう。(逆に言えば、釣りに不適な場所で頑張ったって無駄だということです)  マイケル・E・ポーター氏が1980年代に提唱したフレームワークです。企業が競争に勝ち残るには環境が大事という考え方から「ポジショニング論」と言われています。
 さて、5つの要素(5Forces)とは以下の5つのことです。1)新規参入者の力、2)競争者の力、3)代替品の力、4)買い手の力、5)売り手の力 です。図にすると下記のようにまとめられます。

 ビジネス経験のある方ならば、5つある要素について、それぞれ個々に納得できると思います。ただ、5つの全ての視点でもれなく考えることができるかと言えば、ちょっと難しく漏れてしまうことも多いでしょう。 だから、このフレームワークはチェックリストとして有効です。では、1つづつ見ていきましょう。

  • 競争者(競合企業)の力(実力)
     同じ業界内のライバルとの実力比較をします。既に自社よりも優れた企業が多々あれば、その業界に参入しても勝ち目は乏しいでしょう。
     例えば、ハンバーガーチェーン店を展開しようと考えても、マクドナルドの強力な商品力と店舗網と知名度を凌ぐことは容易ではありません。 ピザも同様で、ビザハットが強力です。うどんは丸亀製麺が強力です。もしかしたら、そばのチェーン店舗は可能性があるかもしれません。
     また、コモディティ化が進んでいるような業界も儲けが少なく参入する魅力に乏しい業界であることが容易に予想できます。

  • 新規参入者の力
     新規参入してくる企業の脅威度も分析しましょう。もし儲かる業界ならば、他社も続々と参入して来ることが予想できます。 その業界でビジネスをやろうと言うならば、これも見越しておかなければなりません。
     参入が容易な業界というのは苛烈な業界のレッドオーシャン(血の海)になる可能性が高いものです。例えば、***********
     逆に言えば、その業界には参入障壁があって、容易に他社が参入して来る恐れが少ないとしたら、早めに業界に進出して積極的に参入障壁を作っておくことで、競合が後から参入してくることを妨ぐという作戦も考えられます。
     例えば、携帯電話の事業を行いたくても、総務省の電波行政の指揮下にあるので、誰でも簡単に参入できるものではありません。 そんな参入障壁の高い業界にソフトバンクが参入したのは見事でした。後になって、それはiPhoneという強力な商品の登場を国内で独占的に販売できることを予期していたからできたことだとわかるのですが。

  • 代替品の力(脅威度)
     これは想像力が無いと難しいのですが、代替品に取って代わられる脅威度も分析しましょう。つい見過ごしがちです。 伏兵とも言える相手を予想することです。そのためには、他の業界にも目を向ける必要があります。
     例えば、スマートフォンは21世紀に登場した代替品の脅威の象徴でしょう。スマホで音楽を聴くこともできるので、ポータブルオーディオプレーヤー業界から顧客を奪う。 スマホで映画を視聴することもできるので、映画のレンタルビデオ業界から顧客を奪う。スマホでゲームを楽しむこともできるのでゲーム業界から顧客を奪う。 スマホで地図と行き先表示もしてくれるのでカーナビ業界から顧客を奪う。スマホで写真を撮影することもできるので、デジカメ業界から顧客を奪う。 などs、様々な業界の代替品として力を発揮し様々業界の事業の継続を奪いました。まさに希に見る脅威の商品です。日本メーカーが得意とする産業を次々と壊滅してしまいました。
     さらに、スマホにお金も時間も使う、だから自動車を買う気も起こらない・・・・と、若者の車離れも、スマホが代替品の脅威として働いていると言うこともできるでしょう。

  • 売り手(サプライヤー)の力(交渉力)
     売り手が強ければ、「買わせていただく」姿勢となってしまいます。売り手側の要求などを飲まなければなりませんので、この業界に参入しても儲からないことが予想されます。 また、売り手の都合で事業の方向性も大きく影響を受けるため安定した経営が行いにくくなります。
     例えば、パソコン事業では、インテルとマイクロソフトがパソコン業界に関わる関係者の事業の命運を握っています。こうした強い売り手が存在する業界では、新商品の仕様も価格も販売時期もフリーハンドで決めることすらできません。 生殺与奪を握られているのです。そして、マイクロソフトは「Windows10以降の新バージョンのWindowsは出しません」と明言までしております。これに対しパソコンメーカーは何も対策を打つことができません。
     もし今、ある企業が高性能蓄電池を開発し独占してしまえば、世界中の自動車会社はこの企業の交渉力の前に従うだけとなります。 同様に、ある企業が高性能な自動運転のコア技術を持てば、多くの自動車会社はこの企業の交渉力の前に従うだけとなります。言い値でこの商品を買い取らせることができるでしょう。 それゆえ自動車業界は、インテルやマイクロソフトのような企業が登場しないように、必死で開発をすすめています。

  • 買い手(顧客)の力(交渉力)
     買い手側が強ければ値引きを要請されるので、この業界に参入しても儲からないことが予想されます。逆に買い手が弱ければ強気に出ることができるので、魅力ある業界と言えます。 (買い手が弱いということは、需要も少ないということも考えられるので、嬉しいとは限りません。)
     例えば、多くの家電メーカーは、ヤマダ電機など大手家電量販店の購買力の前に、買い叩かれてしまいます。今の日本では家電という業界は買い手の交渉力が強いからです。 多くの日用品メーカーも同様です、イオングループなどの大規模店舗の意向を踏まえずに、ビジネスを進めることはきません。
     しかし、ユニクロは、自社で店舗を展開しているので、価格も販売時期も自分の意思で決めることができます。100円ショップのダイソーも、自社で店舗を展開しています。自動車業界も自社系列の販売店を全国に展開しております。 翻って考えますと家電商品のメーカーはなぜ、買い手の交渉力を無力化する全国販売網を手放してしまったのでしょう。例えば、松下電器は全国に展開するナショナルショップがありましたが、 これをもっと育て上げて、ユニクロ、マクドナルド、トヨタの販売店のように強化すれば、家電業界も別の歩みをしていたかもしれません。

  •  さらに深くこのフレームワークを掌握するために、以下の情報も参考にしてください。
     ・書籍
       「競争戦略論I」マイケル E. ポーター (著), 竹内弘高 (翻訳)
       「競争戦略論II」マイケル E. ポーター (著), 竹内弘高 (翻訳)
     ・映像
       ビジネススクール「グロービス」が提供する動画学習サービス(お試し)→5つの力分析
     ・Web記事
       HarvardBusinessReviewオンライン →外部環境分析:ポーターのファイブ・フォース分析から考える
       週刊ダイヤモンドが提供するオンライン記事 →3分でわかるポーターの『競争戦略』

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    演習:ケーススタディ(具体的な商品の事例で考察)

    5Forces分析
    カシオのQV-10のヒットで各社は参入を開始
     5Forces分析を使って、パナソニックがデジタルスチルカメラ(以降、デジカメと表記)に本格進出した2000年頃の当時の状況を考察してみましょう。
     デジカメは、1995年にカシオが商品化した新商品で一般の人でも手にすることができるような商品となりました(それ以前にもデジカメはありましたが、個人が趣味で楽しむではありませんでした)。 また、丁度このタイミングで、Windows95が発売されてパソコンが急速に普及し始めました。パソコンに写真をすぐに取り込めるデジカメは、パソコンと共に人気を集め、各社がこの分野に参入してきました。

     パナソニックもデジカメを商品化をしてはいましたが、企業姿勢としてあまり力は入っていませんでした。1999年の段階では3つの部署がそれぞれバラバラに商品化をしているような状況でした。 パナソニックは、中村社長が就任後に下したトップダウンの命令を受けて2001年に企業の総力を挙げて本格的に新商品の開発を進め、デジカメを市場に投入します。
     その時に、5FORCESで市場を分析していたら以下のように分析をされていたことでしょう。

    • 競争者(競合企業)の力(実力)
       本気でやれば、カシオなど先行するデジカメ商品達に負けない新商品を作ることができるだろう。 パナソニックには、ポータブルビデオカメラ(カムコーダー)で培った商品開発力がある。特にキーデバイスとなるCCDは内製化できている。 映像処理のLSIも内製化できているし、バッテリーも内製化できている。レンズも非球面レンズという高度なモノまで内製化できている。 (レンズはLICAと提携してさらに良いものを作ると共に、LICAブランドを冠する商品を作ることで、キヤノン、ニコンのブランド力に対応できるようにした)

    • 新規参入者の力(脅威度)
       自分たちが本格参入をした後に、カメラメーカー老舗のキヤノンとニコンが本格的に参入して来る恐れは考慮する必要があります。
       彼らのカメラメーカーとしての知名度は抜群であり根強いファンも多い。それゆえ我々が市場参入しても駆逐されてしまう恐れを考慮しなければなりません。 しかし、彼らは現行のフィルム式のカメラの主力メーカーでもあるから、カニバリゼーションを恐れて、デジカメがそれほど普及していない今の段階では参入を躊躇するとも予想されます。
       だから、早期に参入して我々が業界で知名度を確立していくことで新規参入者の脅威に備えることができると考えられます。 (パナソニックは、広告宣伝の力も多様してLUMIXというブランドを認知させることに成功した。実は、最初のモデルでは、PanasonicがメインブランドでサブブランドにLUMIXを配置していた。 しかし、カメラのメーカーとしてのブランド力としてはPanasonicは家電のような雰囲気で弱く、不利になるとの判断が下されて、 社内ルールに例外を作ってLUMIXをメインブランドとしPanasonicブランドを商品のメインに出さないこととした)

    • 代替品の力(脅威度)
       特に見当らない。
       後にスマートフォンにより、コンパクトなデジカメ市場は大部分が代替されてしまうことをまだ想像できませんでした。
        (これは誰にも想像できなかったでしょう)

    • 売り手(サプライヤー)の力(交渉力)
       電子部品の多くを内製化している上に、外部調達する部品も完全にコントロールできる。
       パソコンならば事業の命運はインテルやマイクロソフトに牛耳られてしまうが、デジカメはそうした恐れは無いと言える。  主要部品はグループ内で内製化できるし、電子部品の調達力でパナソニックよりも力のある電器メーカーなど世界中に存在しないだろう。

    • 買い手(顧客)の力(交渉力)
       ポータブルビデオカメラ(カムコーダー)で家電の店舗の一等地を押えることもできる力がある。店舗との交渉力競合メーカーよりも大きい。 カメラ店への影響力は強くないが、家電の店頭で販売できれば消費者へのリーチの点でハンディにはならないだろう。
       消費者を誘導するため、大量に宣伝を投下する力もある。(当時人気の高かった浜崎あゆみをキャラクターにしてTVーCMなど大量の宣伝を行った。 カメラマニュアのおじさん向けではなく、若い人々にアピールする良いエンドーサーになった。)


    5Forces分析
    パナソニックはデジカメ市場に本格参入する
     5FORCESのフレームワークで分析すれば、パナソニックはデジカメ市場に後発でも本格参入に挑戦する機会があると読み取ることができます。
     そして、パナソニックは、それまでに複数の事業部門がバラバラに行う小手先の商品化から、本社が乗り出して経営資源を積極的に投じて、全社から人材を集めて、デジカメ市場に本格参入することになるのでした。 北米経験の長い中村社長であれば、5FORCES分析のフレームワークを知っており、自らこの判断をしたとも考えられます。


    新商品を成功させるためには

     新商品・新規事業を担う方にとって、このフレームワークは有効かと言えば、半々です。既存の商品を改良したような新商品であれば、分析は有効に機能するでしょう。 しかし、その新商品が革新的であればあるほど、このフレームワークは役に立ちません。

    ウォークマン
    革新的な商品は5FORCES分析は不可能
     例えば、ソニーが商品化したポータブルオーディオプレーヤーの「ウォークマン」のような画期的な新商品は、開発の初期段階では5Forces分析をしても何も意味ある結果を導けなかったでしょう。 ヘッドフォンでの再生機能だけしかないオーディオ機器など、世の中に存在していなかったのです。その時、新規参入の力、競争者の力も代替品の力も売り手の力も存在しておりません。
     周知のように、ソニー創業者の井深&盛田が、「これはいい!」と商品化を強引に推し進めて「ウォークマン」の新商品の事業は成功へと導かれたのでした。井深&盛田の両氏は、5Forces分析などしなかったでしょう。

    iPod
    斬新的な商品ならば5FORCES分析は可能
     一方、現在のポータブルオーディオプレーヤーの主役であるiPodの登場段階であれば(今ではiPhoneなどのスマートフォンにその機能が内蔵されている)、5Forces分析は可能であり意味のある結果を導けたでしょう。 iPodが登場する頃はウォークマンを筆頭にポータブル音楽プレーヤーは巷に溢れていました。若者ならば1台持っていても不思議ではないぐらいの普及度でした。 そういう環境であれば、5FORCES分析のフレームワークを活用して、半導体メモリーへの音楽のダウンロード機能を搭載した改良型のポータブルオーディオプレーヤーの新商品の成功の見込みを想定することはできたでしょう。
     実際は、ジョブス氏が「こんな商品があったらいいな」と思ったから作ったというのが真実で、アップルの経営企画陣やコンサル会社が5FORCES分析をして商品化に貢献したようなことは無いでしょう。

     このように新商品・新規事業を担う方にとって、5FORCES分析は、必ずしも役に立つとは言い切れないフレームワークです。だから中途半端に有効なフレームワークとして、その有効性は理解しつつも、過度に頼らないようにする心構えが肝心となります。


    よくある失敗・注意点

     先ほど、ソニーのウォークマンの誕生に5FORCES分析など寄与しなかっただろうと述べましたが、ここでは、さらにホンダの事例から新商品・新規事業を立ち上げようとしている人に5FORCES分析をしても役に立たないことを、確認してみましょう。

    ホンダ優勝マシン
    マン島レースの優勝マシンの開発
     本田宗一郎氏は、戦後の焼け野原から復興する日本で、買い物に便利だからと趣味のようにバイクを作りました。やがて草レースにも参加しました。 その時、世界一のバイクメーカーになるという前提で、5FORCESで競争環境を分析したら、「参入するだけ無駄だ」という結論しか出てこなかったでしょう。 欧米の優れた工業力の前に敗戦国日本の工業力は劣っていることは明白で、名も知らない町工場のおやじにどんな可能性があると言うでしょう。 しかし、本田氏は、折角ならバイクの有名なレースに出て勝ちたい。ただそれだけの情熱で突き進んだのです。部下達もその情熱に引きずられて“おやじ”を慕いながら突き進んだのです。 最初はボロボロでしたが、数年後、敗戦国の名も無き町工場のおやじと彼が率いるチームが、世界一のレースで勝ったのです。しかも、圧倒的な強さを持つバイクに仕上げることができました。 その結果、次第にホンダのバイクは世界で売れるようになりました。

     もし、5FORCES分析の権威のコンサルタントが、レースに勝つ数年前にまだ焼け野原も多かった日本に立つ本田宗一郎氏の横にいたら、彼にこう語るでしょう。 「もうこれ以上、バイクレースにお金を注ぎ込むのは辞めなさい。無駄です。世界の競合に互して戦える可能性などこの田舎の町工場にあるワケがない。 あなたの活躍の余地は、貧乏な日本人に安価な原付バイク(原動機付自転車)を作って供給することです。奥さんの買い物用に作ってあげたような便利なバイクをもっとたくさん作りましょう」と。
     5FORCES分析に従ってホンダの事業を運用していれば、原付の名車”カブ”だけは産まれたかもしれません。でも世界のホンダにはならず、カブも国内専用のモデルで終わった可能性が高いでしょう (スバル360のように当時の名車と言われながらも国内オンリーで終わった)。
     どうせ、本田宗一郎は5FORCESの権威からの助言があったとしても耳を貸さなかったでしょう。バイクだけではありません。ホンダが自動車(四輪)に進出する際も、 海外に輸出を開始する際も、ジェット機を作り始めた時も、5FORCES分析をして勝機が見えたら経営資源を突っ込んで事業化を加速させたワケではありません。
     もし、1950年の段階でホンダ宗一郎が、5FORCES分析を信じて経営判断にこのフレームワークを使っていたのならば、バイクで、車で、ビジネスジェットで世界をリードするホンダという会社は無かったでしょう。 このように世の中を変えるような新商品・新規事業を立ち上げようと奮闘する人にとって、5FORCES分析のフレームワークは気に留める必要もないものなのです。

     このように、5FORCES分析は、真に革新的な新商品・新規事業を成功に導いていくためには役に立たないのです。有用なフレームワークではありますが、条件や限界もあるのです。 だから、あなたの新商品・新規事業が画期的であると自負している場合は、上司先輩同僚が、あるいはコンサルタントの先生が、5FORCES分析の中途半端な知識で、あなたの大事な新商品・新規事業を分析して、未来を潰されてしまわないよう警戒しておきましょう。 対抗できるよう5FORCES分析の有効性と限界について知識と経験は持っておいたほうが良いのです。


    最後に

     漸進的な新商品・新規事業であれば、5FORCES分析を行って、これからのアクションを検討することもできるでしょう。例えば、トヨタがレクサスブランドで新カテゴリーの車種を投入しようと考えるのであれば、このフレームワークを使うことで検討を深めることができて判断ミスを防ぐこともできるでしょう。
     一方、画期的な新商品・新事業の場合には、革新的な商品であればある程、競争相手もわからない混沌とした状況でスタートすることになります。このフレームワークを適用することに拘る必要はありません。 でも、その新商品がうまく立ち上がってビジネス軌道に乗ってきたら5FORCES分析を行って、これから脅威となる力がどこかに無いかをチェックして、先手を打って次の一手を検討するために使ってみましょう。

     さて、5FORCES分析のフレームワークを提唱するポーターの考え方は、企業が競争に勝ち残るには経営環境が大事という考え方から「ポジショニング論」と言われています。 これに対抗するのが「資源論」で、企業は強みのある経営資源を持つことが大事という考え方の一派です。 「ポジショニング」の一派は目線が社外に向いていて、「資源論」の一般は社内に向いているのです。
     学者ではなく実務をしている方々ならば、「どっちも大事」、「状況により重要性も変化する」ということを考えると思いますし、それが正しいでしょう。 「ポジショニング論」派のポーターの「5FORCES」のフレームワークは、「資源論」派のバーニーの「VRIO」のフレームワークと共に、知識として把握しておきましょう。 どちらか一つのフレームワークに固執すると「バカの一つ覚え」と笑われます。実務に関わるならば、どちらの学派も同じ程度に関心を寄せ、「どういう条件で、どちらをフレームワークを活かせば良いのか」を考えていきましょう。
     ただ残念ながら、本当に実務家が知りたい、「どういう条件の時に、どちらをフレームワークをどう活かせば良いのか?」に応えてくれる便利なフレームワークはまだ提唱されておりません。
     我々が取るべきスタンスは、状況に応じてフレームワークをダイナミックに考える習慣をつけることです。 柔道家ならば、背負い投げ、大外刈り、上四方固め・・・・・と多くの技を身につけようとしますし、さらに、相手の出方に応じて、最適な技を繰り出せるように努力をし続けます。 同様に、新商品・新事業に関わるメンバーは、新商品・新事業に有効なフレームワークという経営学の技をより多く習得し、さらに、その時々の状況に応じた最適なフレームワークをダイナミックに適用する努力を継続することです。
     キーワードはダイナミック(動的)です。「バカの一つ覚え」には注意です。戦略は「ポジショニング論」「資源論」だけではありません。